映画[ あの日、欲望の大地で ]3世代にわたる女性の愛憎を描いた、壮大な物語 | アロハ坊主の日がな一日

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映画[ あの日、欲望の大地で ]3世代にわたる女性の愛憎を描いた、壮大な物語
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    映画[ あの日、欲望の大地で ]をBunkamuraで鑑賞。


    本作の監督ギジェルモ・アリアガという名を知らなくても、複数の物語を交差・シンクロさせて紡がれる[ 21グラム ]、[ バベル ]の作品は観たことがあるだろう。それら作品の脚本を手がけたのが、このギジュルモ・アリアガだ。本作でも、その卓越したストーリーテーリングは健在である。

    描かれるのは、母娘の宿命ともいうべき、女の業。
    そして愛憎から生まれる家族の崩壊と再生の物語だ。
    断崖にあるレストランでマネージャーを勤めるシルヴィア(シャリーズ・セロン)は、颯爽と仕事をこなしつつも、行きずりの男性と関係を重ねる孤独な日々を送っていた。ある日彼女の前に、マリアという少女を連れた男が現れる。シルヴィアには、誰にも言わずにきた過去があったのだ…。シルヴィアは少女時代、マリアーナと呼ばれていた。乳がんを患ったマリアーナの母(キム・ベイシンガー)は、妻子ある男性と恋に落ち、あるトレーラーハウスで情事を重ねていた。(gooより)

    冒頭、主人公・シャーリーズ・セロンの濡れ場から始まる。情事のあと、裸のままで、部屋の窓をあけて、遠くを眺めるシャーリーズ・セロン演じるシルヴィア。今は抜け殻。本当のわたしは、遠い昔に置き去りにされしまったかのようなただずまい。その家のまえを通る園児と、その母親たちはその姿に驚き彼女を奇異なまなざしで、見つめる。

    レストランでマネージャーを勤める彼女は、仕事を即なくこなし、できる女性である一方で、私生活ではまさに男たちと行きずりの肉体関係を持ち、太ももを石で傷をつけるなど自傷行為を繰り返す。捨て鉢ような人生。なぜ、彼女はこんな生き方をしているのか。

    そう思ったとたんに・・・映像は彼女の少女時代のエピソードがインサート。

    あのオスカー女優が、いきなりパイオツ出しの上半身のヌードを披露し、何かが違うと思わせ、誰もが引き込まれるであろうインパクト十分なオープニング。それだけでなく、時代の異なるエピソードが交差するタイミングなど、ストーリー・テリングの妙といいますか、お見事です。

    シルヴィアがこうなったのも、元はと言えば母の不倫が原因。よくありがちなエピソードに見えるキム・ベイシンガー演じる母親のそれは、常識という範疇では推し量れない母としてではなく、女として生きてみたいという女性の悦びがくみ取れる。湯さえも満足にでないようなトレーラーハウスで、不倫男性と暮らすように二人で逢瀬を重ねるシーンが、リアルである。まさにエピソードを交差させながらも、じっくりと丁寧に描かれていくこのプロセスが、他者には決して理解できぬだろう心の奥までも深く掘り下げていくような効果を生み出しているようだ。

    特に、本作はこの手法は掘り下げの効果だけではなく、パズルのピースとして役割となっていて、謎を詳らかにしていく構造にもなっているのが、映画を面白くさせている。そのクライマックスはかなり衝撃的である。

    これだけ巧みに入り組んだ展開なら、わかりにくくなってもいいようなものだが、それを絶壁に建つレストラン(海というモチーフ)をベースに、曇天の空模様がみせる陰鬱なグレイカラーという今。シルヴィアが、マリアーナと呼ばれていた少女の頃、そしてシルヴィアの娘・マリアと父と暮らす頃は、広々とした大地をモチーフに、焼けつくような赤茶色をテーマカラーにして、色彩の違いを出し、映像に配慮している。

    嫌っていたはずの不倫を、自らもその関係に陥ってしまったシルヴィア。憎しみは愛から生まれ、逆もまたしかり。それが、母と娘という関係において、脈々と受け継がれていく本作は、抗いきれない血の深さいうか、女の業というのを感じずにはいられない。

    クライマックス、シルヴィアの夫のサンティアゴへの自らの罪を懺悔するシーンが印象的だ。シルヴィアにとっては、今まで理解できなかった母の行為が、このときはじめて腑に落ちた瞬間かもしれない。娘・マリアとの和解には、かすかであるが希望の光が見えた。3世代にわたる女性の壮大な愛憎の物語だが、これが男なら絶望感しか残らなかったかも、と思った。なぜなら、彼女たちにはサヴァイヴ(生き残る)という意思があったからだ。
    | 映画レビュー | 23:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
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