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[ 文学的商品学 ]
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    ●[ 文学的商品学 ]/著・斎藤美奈子
    ??商品情報を読むように小説を読んでみよう。
    ちょっと無機質な感じのする、メッセージだが、
    それが、小説の新しい楽しみ方。


    本書のはじめには、こんなことが書かれている。
    小説を読むとき、あなたはストーリーばかりをおいかけてみませんか。あるいは登場人物ばかり見ていないでしょうか。物語にオリジナリティがあるとかないとか、人間が描けているいるとかいないとか、あるいは文章が端正だとか雑だとか、感動できるとかできないとか、そんなことにばかり、私たちは目を奪われてきたような気がします。

    そうなんすよー。これは大衆消費社会の今という時代にちなんで、日本の現代文学を、モノから読み取る。「モノの描かれ方」から小説を楽しんでみようという狙いで書かれた異色の小説評論集。

    青春小説、風俗小説、カタログ小説、フード小説、オートバイ小説、バンド文学、オートバイ文学、野球小説、貧乏小説という9つのジャンルで、様々な作家の作品を読み解いていくのだけれど、これが期待を裏切る面白さ。

    一人称小説の代表であり、現代文学の王道である「青春小説」では「衣服の描写」という「モノの描かれ方」についてふれている。
    「衣服の描写」には、
    ●みっともない(情けない)服装のとき
    ●めかしこんだ(堅苦しい)服装のとき
    ●扮装・変装・仮装など
    という傾向があるという。

    この3つはいずれも「非日常的な服」を着てしまい、主人公(語りの手)の意識が、そちらに向かざるをえない状況になってしまった時に描写されるのだと・・・。そして今度は、他人の衣服に目がいくのは、語り手がドキドキしているときで、しかし描写が味気ない。でも「脱ぐ/脱がせる」というシチュエーションになると、突如として、今までにないファッショナブルな青春小説が顔を出す傾向が・・・。いかにも青春小説っぽく、作家の意識(主人公の意識)が丸出し。青春小説という青臭いワールドが、「衣服の描写」ひとつにもこんなに赤裸々に表現されているとは・・・・、考えただけで面白くありません?

    しかしこの「衣服」が「風俗小説」になると180度話が変わってしまう。なにせ、風俗小説は衣食住や流行をしっかりと描写したジャンルですから。こちらは、どちらかというと作品のダメっぷりを指摘した書かれ方が面白い。「描写のすぐれた」金井美恵子の『恋愛太平記』と比較して、渡辺淳一の『失楽園』の文章を「色+柄+アイテム」という衣裳の説明はしていても描写されていないと一刀両断。女流作家と大御所という決して同じ土俵には上らないような作家が比べられるのも一興だ。とさらに衣裳の描写は、食や住の表現とレベルがあっているとこれまた、ダメ押しの比較を展開する。流行にもなった『失楽園』は、当時日経新聞に連載されておったのだ。世のおじさんサラリーマンたちは、こんな・・・稚拙な文体に踊らされていたんだなと思うと、なんだか楽しくもあり、悲しくもなる。

    このように、小説(文学)のジャンルと(モノの描かれ方)との関係は
    たんに物語やキャラクターだけを追い求めるだけでは見えない小説の楽しみ方を教えてくれるのだ。またこれは逆の発想をすると、そんな見方ができれば、小説を読むのがもっと面白くなるということでもある。世の中に、つまんない小説はごまんとあるだろう。でもそれって、本当にそれ自体がつまんないから?読み手のレベルが、小説の面白さについていけていないだけじゃないの。

    そこで・・・、冒頭本から引用文に戻ってみる。

    小説を読むとき、あなたはストーリーばかりをおいかけてみませんか。あるいは登場人物ばかり見ていないでしょうか。物語にオリジナリティがあるとかないとか、人間が描けているいるとかいないとか、あるいは文章が端正だとか雑だとか、感動できるとかできないとか、そんなことにばかり、私たちは目を奪われてきたような気がします。

    「小説を読むとき」を「映画を観るとき」に、
    「文章が端正だ」を「映像がきれいだ」に
    変えても、文章として成立する。

    ようはこれは小説に限らず、映画や落語や漫画などエンタメ系に共通していえること。だから映画も人それぞれにもっと楽しみ方はあるってわけだ。だって、究極の好き嫌いで成立しているものなんだから。大多数にケチをつけられても、あなたが楽しけりゃそれでいいじゃん。逆もまた真ぜよ。こんな時だから、こんなことをちょっと毒づいてみたかったのさ。

    斎藤美奈子女史の本は、やっぱりいいわ。
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