CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
RECOMMEND
MOBILE
qrcode
<< 家具のモダンデザイン/著・柏木博 | main | 映画[ ホームレス中学生 ]これにて、解散 >>
映画[ 真木栗ノ穴 ]現実と幻想の間で
0
    映画[ 真木栗ノ穴 ]を渋谷ユーロスペースで鑑賞。

    1970年代。前後の時代に比べ、この時期に生まれた映画監督は
    将来性のある傑出した人たちが多い。
    山下敦弘、西川美和、小泉徳宏、熊切和嘉、タナダユキ・・・。
    そして本作の監督、深川栄洋もその中の一人だろう。
    彼の作品を観るのは、[ 狼少女 ]以来となる。

    主演は、こちらも今や引っ張りだこの西島秀俊。
    一種のホラー映画ではあるが、小説家を演じた西島秀俊の
    なかなかお目にかかれないユーモアラスなキャラは必見です。



    売れない小説家の真木栗勉は、古いアパートで小説を書く日々を送っていた。ある夜、彼は部屋の壁に二つの「穴」がある事に気付く。真木栗は官能小説の執筆を依頼される。隣の男が女を引っ張り込んで、情事に耽る様子を覗いては小説のネタにしていた。ある日、彼はアパートを見上げている美しい女を目にする。どうやら部屋を探しているようだ。隣室宛の荷物を預かった真木栗は、反対側の「穴」を覗いてみた。すると、あの女が…。(gooより)


    深川監督は、創り出す世界観が、面白い。
    劇場用長編映画として初めて撮ったキンダーフィルム[ 狼少女 ]は、
    昭和のノスタルジーと、どこから現実離れした世界を、「見世物小屋」という装置を使ってうまく表現している。本作はかなり毛色が異なるはずなのに、
    どちらでも幻想的な雰囲気を醸し出している。本作では、“切通し”というシチュエーションを[ 狼少女 ]の、「見世物小屋」のように、効果的に機能させているのだ。

    真木栗が描いた小説は、彼の部屋を訪れる置き薬屋の男(尾上寛之)や穴から見える隣人の男(北村有起哉)、そしてもう一つの隣の空き部屋に越してきた女性が巻き起こす。真木栗が目にしたエピソードをもとに描かれている。しかし・・・、時が経つにつれて、それが現実か、幻想が次第にあやふかになっていくのだ。何かに夢中になりすぎて、その境目がわからなくなってしまう恐怖。

    置き薬屋がいつも届けてくる頭痛薬や、締切日を間違って覚えていたり、
    次第に解読不能な文字を書くようになったりと・・・。
    真木栗が壊れていく様が、少しずつ微妙な変化となって表われている。

    ここで、西島秀俊演じる真木栗がたまに見せる“天然なキャラ”が活きてくる。相手が席を離れているのに、えんえんと話続けたり、来訪者がいるのに、熱心に穴から隣の部屋を覗き見ていたり。最初は、微笑ましく笑えた彼のコミカルさだが、どこまでが性格的なもので、どこからが狂気の兆候なのかが、観ているこちらもあいまいになってくる。結末を知ったときに、実はあのシーンではもう壊れていたのか?なんて、後になってぞっとさせられる。

    本作はとてもシンプルなプロットなのに、単調に見えず、クライマックスまで引き込まれる。それは、真木栗の部屋の撮り方にひと工夫あるように思われる。例えば、真木栗が机に向かい小説を推敲するシークエンスでは正面から、真上から、ま横からパン。それは、まるで小宇宙のように、映し出していているからだろう。6畳ほどしかない間取りも、10畳以上の広さに感じられるのもそのため。

    エロティックな部分もかなり濃厚に描かれているが、それほどいやらしくないのは、狙いなんござろうか。とにかく独特の世界観が楽しめる一作です。
    | - | 10:36 | comments(0) | trackbacks(0) |
    コメント
    コメントする









    この記事のトラックバックURL
    トラックバック機能は終了しました。
    トラックバック