映画[ ぐるりのこと。 ]苦しみを乗り越えた人にしか、みえない景色がある1 | アロハ坊主の日がな一日

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映画[ ぐるりのこと。 ]苦しみを乗り越えた人にしか、みえない景色がある1
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    映画[ ぐるりのこと。 ]をシネマライズで鑑賞。

    リリー・フランキーがお尻に自信ありとインタビューで応えて理由がやっとわかった。二度ほどうつる全裸はお腹のでっぱりが象徴する中年体型はぬぐえないが、その中でもあのお尻は・・・20代の若者ともはりあえる、美尻である。

    パンフレットの表紙は、『東京タワー』の書籍を思わせるシンプルな装丁。
    タイトルは、もちろんリリー・フランキーの題字である。
    ぐるりのこと レビュー
    2回観てから書こうと思ったが、がまんできなかった。
    ・・・ということで、まず1回目。

    この映画の舞台となった、1993年冬から9・11のテロに至るまでの約10年間は、ちょうどオイラはサラリーマンの頃だ。
    バブル期から崩壊後の1年目ぐらいまでは、出鱈目な事をやっていても、頭をさけずともなんとかやっていけた。
    特にバブルは、明け方まで仕事をして、帰りにおねーちゃんを求めて難波へくりだして、どんちゃん騒ぎをして次の日、仕事。その繰り返しの日々で、今思えば、仕事もプライベートも、手ごたえや充実感なんてものが全くなかったような気がする。どこか普通じゃない、リアルじゃない。そんな時代だった。

    それが、崩壊とともに一変していく。
    浮かれ過ぎた時代のツケが一挙にまわってきたように、あれもダメ、これもダメ・・だめだめだめだめ。今までの毎日がフィーバーという感覚が嘘のように、静まり、そして達成感も味わえない世の中に。まさに閉塞感。それに世紀末の終末観も加わり、転換期でありながらも・・・、自分たちの考え方がその変化についていけず、ただ迷走していた。この10年は・・・痛みがあることで、現実を実感できた時代かもしれない。

    強いものだけが正しいとされてきた時代。
    絶対としてあった言葉によるコミュニケーションへの不信の時。
    善悪のはっきりとした区別のできない世の中。

    そのせいかリリー・フランキー演じるカナオが、
    もしかしたら妻・翔子よりも
    壊れるのではと思い…ずっとハラハラしながら観ていた。

    法廷画家として、考えられないような狂気な事件を目の当たりにしながら、
    家に帰れば、心の闇から抜け出せない妻が待っている。
    この状況なら、いつカナオのネジがはずれてもおかしくない。
    でも、彼はこの10年を、(見た目には)飄々と乗り切ってしまう。

    妻に対して、社会に対して彼はいつもしっかりと向き合っている。
    ちゃらんぽらんで、女たらしの彼だが・・・、心のうちでは「決して、逃げない」という意思を持って生きている。

    だから妻・翔子の表情や言動を、慈愛にみちたまなざしで見守っている。
    法廷画家という仕事を通しては、被告人や証言者などのしぐさや服装などから、彼ら・彼女たち、または関係者たちの心情を読み取り、絵を描いていく。

    橋口監督には珍しく、主人公が人の意見に耳を傾けるシークエンスがある。
    カナオは自分と似た所を感じる、記者・安田(柄本明)の病室を訪れ、「安田さんは、なんで逃げないでいられるんですか?」と、尋ねるシークエンスがそれだ。カナオが唯一、妻以外に人に胸の内をあかすのだ。
    安田はそんなカナオに「失いたくないものがあるからかな・・」とつぶやく。

    タイトルの「ぐるり」とは、周囲の(人の)こと。
    このシークエンスやタイトルからも、前作から今までの6年という期間での監督の心境の変化がうかがえる。人と人と間にしか希望はないってことが・・・。

    カナオが挫けずに、妻にいつもそっと寄り添っていられたのは、
    彼の根っこには、信じられるものがあったからのような気がする。

    翔子との違いは、彼は言葉じゃないところで翔子の想いを感じられたから。
    翔子は、あれやこれやと考えすぎてしまったがために、深い闇に包まれてしまったが、カナオは多くを語らず、言葉に頼らずに、感じることで、信じられた。それは絵描きという仕事にも、繋がる感性かもしれない。

    何が正しいのかわからない世の中。だからこそ、カナオは自分で咀嚼して、自分だけが信じられることを信じて生きてきた。そのために彼は口にせずじっと眺め、見守ることが必要だったのだ。

    価値観の違いをこえて一緒に苦しみを乗り越えることで、
    見える景色がある。



    後半、夫婦二人は絵を描くこと、食物を育てること。
    本作は、苦悩の日々よりも、夫婦ふたりで何かを生み出し、築いていく日々が長く収められているように思う。今までの橋口監督作品ではほとんど描かれなかったことだ。二人で築くものには、強さよりも、美しさがある。
    美しいものに価値がある世の中。ゆっくりと時間が流れる。

    出会いこそが美とされてきた今までと違い
    これからは一緒に築いていくことこそ、大切なのである。



    作品の見所は、とにかく長回し。
    橋口監督のエチュードによる演出で、時間をかけて、2人の関係を築き上げた。翔子とカナオの関係は、木村多江とリリー・フランキーの関係でもある。これは演技じゃない、生身の人同士のぶつかり合い、そしてその末に
    見つけた幸福の時間が、そこにある。痛くもあり、こっぱずかしくもある。
    自分を観ている気分にもなる。
    来週観るので、また書きます。
    | 映画(おすすめ) | 21:17 | comments(8) | trackbacks(18) |
    コメント
    ちゃみさんへ

    どーも、ありがとうございます。
    では、いい汗ならぬいい涙を出して、
    今日も一日頑張ってください!

    ・・・なんか、朝駅前でやっている
    選挙演説みたいになってしまいましたが、
    お許しくだされ。
    | アロハ坊主 | 2008/07/02 11:31 PM |
    アロハ坊主さん。ほんとに、いつも、なんというか、迷いもありつつなんでしょうけど、まっすぐなかんじの内容なので、ほんとこっそりしっかり読んでました(笑)。
    また、たまーーに、書き込みさせてもらいますね〜〜。ほんとあの映画を観て以来、泣き上戸になったかんじです。いい涙ですっきりするんですけどね。
    ではでは、失礼します。
    | ちゃみ | 2008/07/02 10:09 PM |
    ちゃみさんへ
    いつも、このブログご覧いただいているということでどうも、ありがとうございます。

    本作は、ちゃみさんがいうように、映画の感触がなかなか抜けないですよね。[ ハッシュ ]のときも、同じ感覚だったのを思い出します。やっぱいい映画は簡単には忘れられません。たぶん何度も観ても、同じシーンで泣けますよ。

    とりとめのないなんて、書いてましたが・・・
    オイラとしては、ちゃみさんのようなコメントをいただけるのが、何よりもありがたいわけですよ。逆にこっちが、励まされた感じです。うれしくて、一人でビール飲んでしまいました。どうも、おおきにです。


    | アロハ坊主 | 2008/06/30 11:11 PM |
    アロハ坊主さん。はじめまして。ずっとのぞかせていただいてます。映画好きでよくみてるのですが、ぐるりのことは、スルーする予定でした。ただ、このブログをみて、ハッシュの監督とおもいだし、気になりだしみてきました。号泣で、もう声がもれそうでもれそうで。途中木村たえさんのなくとことか、その場にいるかのようでした。みなさん上手で、そしてなにより言葉がしみました。思い出してもなけてきそうです。アロハ坊主さんのを読んでなかったらみなかったかもしれないので、今回書かせていただきました。監督の不器用さと真摯さが伝わり、ありきたりですが、自分もこのままでいいかなと思えたような・・ハッシュもまたみたくなりました。とりとめなくてすいません。また読ませていただきますのでよろしくおねがいします。
    | ちゃみ | 2008/06/30 12:32 PM |
    真紅さんへ
    コメント&TBありがとうございます。

    橋口監督の作品では、いつもは彼の分身となる主人公に気持ちがいってしまうんですが、今回はリリーが演じたカナオに乗り移っちゃいました。大変でしょうけど、あんな生き方ちょっと憧れてしまうですよね。

    真紅さんのレビューを読んで、また観たくなってきました。来週あたりに行ってきます。では、また。
    | アロハ坊主 | 2008/06/28 11:01 PM |
    アロハ坊主さん、はじめまして。TBさせていただきました。
    橋口監督、お好きなのですね。私も『ハッシュ!』大好きで、この映画は待ちに待っていました。
    「自分を見ている気分」同感です。翔子は監督の分身と聞きましたが、監督のやさしさや繊細さ、苦しみが伝わってきました。
    リリーさんも、カナオにハマっていましたね。カナオがリリーさん自身のように見えた瞬間がたくさんありました。
    私も、もう一度観たいです。素晴らしい映画でした!
    ではでは、失礼します。
    | 真紅 | 2008/06/27 10:46 PM |
    ルールーさんへ
    どうも、こんばんわ★
    TB&コメントありがとうございます。
    そうなんですよね。橋口監督の作品は、共感っていったらいいか、どうかわかんないっすけど・・、きますね。心に。別に結婚もしていませんが、今回もきましたね。おっしゃるように、こんなカップルなら、永くやっていけるのにね。僕も同感です。

    ところで、ルールーさん、絵は描き続けたほうがいいですよ。もったいない。おせっかいですが、だまされたと思って。続けてみてください。

    | アロハ坊主 | 2008/06/19 12:45 AM |
    アロハ坊主さん、こんばんは☆
    大絶賛ですね!
    というか、とてもこの世界観に共感されていて、監督を信頼されているのが伝わってきました。(^-^)v
    橋口監督自身、しばらくうつ状態になっていたとあったので、人の心の弱い部分とかをキチンと理解してあげられてそっと傍に寄り添ってあげられる人なのでしょうね。
    カナオは強いけど堅くてポキッと折れる人ではなくて、ちゃらんぽらんだけどしなやかで折れない本当の意味で成熟した大人の男の優しさを持っている人なんだなーと思いました。
    どんなカップルも、こういう風にお互いに見守ることができればいいんですけどね。
    | ルールー | 2008/06/19 12:22 AM |
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