映画[ ノーカントリー ]現実は残酷で、気まぐれなもの | アロハ坊主の日がな一日

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映画[ ノーカントリー ]現実は残酷で、気まぐれなもの
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    映画[ ノーカントリー ]を新宿トーアで鑑賞。

    本作は、ピュリッツァー賞作家コーマック・マッカーシーの小説「血と暴力の国」の映画化。決して分かり合えない純粋悪の前で、人はどう立ち向かうのか。追う者、追われる者、そしてそんな世の中を嘆く者という3者というシンプルな構成と恐怖の中にも、クスッと笑いたくなるようなユーモアを盛り込んだまさしくコーエン兄弟らしい作品。

    第80回アカデミー賞で監督賞、作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞。

    メキシコ国境に近い砂漠でハンティング中に、偶然、死体の山に出くわしたルウェリン・モスは、大量のヘロインと現金200万ドルが残されているのを見つける。危険を承知で大金を奪ったモスに、すぐさま追っ手がかかる。必死の逃亡を図るモスを確実に追い詰めて行くのは非情の殺し屋アントン・シガー。そしてもう一人、厄介な事件に巻き込まれたモスを救うべく老保安官エド・トム・ベルが追跡を始めるのだった。(gooより)


    ショットガンの音、足音、引き金、窓をたたく風の音・・・など。本作には、物語を盛り上げる音楽が一切ない。あるのは、緊迫感を高めるリアルな音のみ。だからこそ、得も言われぬ恐怖は最後まで途切れない。

    不気味である。マッシュルームでもなく、ボブでもない。今風にいえば、IKKOカットの追う者、ハビエル・バルデムが演じたアントン・シガー。異様なほどの生真面目さと食いついたら離さない執念深さ、そして決して常識が通用しないマイワールドを持った殺し屋。逃げても逃げても居場所をつきとめられ、彼に関わった人は容赦なくあの世に。また殺され方も多種多様で残忍。首を絞められ、のたうちまわって死ぬ者、屠殺のごとく、脳天にシリンダーを打ち込まれる者、そしてコインの裏表で死を決められ、中には偶然にも死を免れる者も・・・。だからこそ、余計に怖い。

    不条理である。「水をくれ」という言葉を思い出し、自宅に帰ったにもかかわらずルウェリン・モスは再び現場に戻り、そこで追手に襲われることに。仏心をだして戻らなければ、命を狙われることもなかったものを。ルウェリン・モスは、これだけなく分不相応というべきことを、もう一度やらかしてしまう。一度は国境を超えて、安全な土地メキシコに行ったにも関わらず、妻ジーン(ケリー・マクドナルド)を守るために傷だらけの身体で再びアメリカに舞い戻るのだ。モスに代表されるような、己の良心に従った行動をも、シガーのような純粋悪は、いとも簡単に呑み込んでしまう。

    そして現実は残酷である。本作は巨大な悪の前では、どうすることもできなかったトミー・リー・ジョーンズが演じたベル保安官によって語られた物語。それは、まるで観客の声を代弁するかのような・・・。そこには、この事件を運命として受け入れるしかないという諦念さだけが漂っている。

    無慈悲で、無情な世の中を描くだけでは、ともすれば無味乾燥な味気ない作品となりがちだが、そこをコーエン兄弟は、奇抜な容姿と一風変わったキャラという殺し屋・シガーでユーモアを漂わせ、エンタメという映画として成立させている。難解な映画のうえに、音楽だけでなく説明をも極力排除し、正直物語としては困惑しどおし。見慣れないものばかりで、好きか嫌いかはっきりとわかれる映画だろう。その中でも意味深なシークエンスのつなぎや、印象に残るインサートのカットなど、凡庸な映画とは一味も二味も違う映像が、目をひく。

    本作が舞台となる時代は、1980年代。ベトナム戦争以降、“銃社会”アメリカで、銃所持数が爆発的に増え、気軽に銃が入手でき、いとも簡単に人が殺されるようになった時代である。秩序は乱れに乱れ、社会は無法化状態におちいった。そんな背景をもとに、この映画は描かれている。ベルの叔父がベルにいう「人間ってのはね、奪われたものを取り戻そうとして、さらに失う。結局は出血を止めるしかない。」というセリフが印象的だ。現代も、あの頃とそう変わらない。時代は繰り返すのだ。
    | 映画レビュー | 20:05 | comments(0) | trackbacks(14) |
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