2007.08.12 Sunday
[ 図鑑に載っていない虫 ]アメリカン・ニューシネマもどき、小ネタで綴る脱線コメディ
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ライターの「俺」は、月刊『黒い本』の美人編集長(水野美紀)から「“死にモドキ”を使って、死後の世界をルポする」よう強引に依頼される。それは1回死んで戻って来いという無茶な指令だった。「俺」(伊勢谷友介)は急いで、オルゴール職人のエンドー(松尾スズキ)とともに“死にモドキ”を探す旅に出た。ルポが締め切り(8月31日)に間に合わなければ美人編集長に半殺しにされる。
はたして二人は“死にモドキ”は見つけることができるのか?
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三木監督の作品は脱力系というより、脱線コメディですね。
伊勢谷演じる僕が、“死にモドキ”を探しいろんな所を訪れるが、彼を取り巻くエンドーや旅の途中で出会った謎の女サヨコ(菊地凛子)、ヤクザの目玉のおっちゃん(岩松了)、舎弟のチョロリ(ふせえり)が、話をあらぬ方向へと導いていく。
特に松尾スズキが演じたエンドーがキョーレツです。
奇妙なキャラクター陣を表しているのが、無数の小ネタ。
サロンパス煙草、カップヌードルの肉を集めたステーキに、シオカラ・ケイジ。そして等身大のゼリー藤尾などなど。でもこれが、小ネタとは馬鹿にできぬほど、秀逸なネタなのです。人が思いもつかぬようなものばかり。
「一度、三木監督の頭をのぞいてみたい」。そんな衝動にもかられてしまう。
本筋とは全く関係のないような小ネタやセリフが積み重って、できあがった本作は、脱線つぐ脱線で、どこに向かって走っているのか、先の読めない物語になっているため、こんな瑣末な話で終わるのかという不安や戸惑いを上映中感じていた。
しかし三木監督は期待を裏切らない。ラストに本筋にしっかりと着地するのだ。そのうえ、よくみると“SM”、“孤島にある乞食の巣”=三途の川など、要所要所で生(性)と死を連想させるシーンも盛り込んでいる。でたらめなようで、緻密に計算された構成は、絶妙なバランスとしか言いようもない、これぞ三木ワールドなのです。
俺とエンドー二人で赤いカブリオレに乗っての旅は、テリー・ギリアム監督が手がけたドラッグまみれのジャーナリストの破天荒な取材ぶりを描いた[ ラスベガスをやっつけろ ](98)であり、煙の中、乞食の巣に向かうシーンは[ 地獄の黙示録 ](79)。“死にモドキ”という死を巡る旅なだけに、タイトルバックなどは日本の70年代のテイストで作り、シーンはアメリカンニューシネマ風に、頽廃的で厭世的なムードを表現。男二人の物語から始まるロードムービーというのは[ イージー・ライダー ] (69)にもかぶっている。
映画ならでの要素や、彼特有の脱線小ネタなど満載の映画です。三木監督の次回作は、オダギリジョーと三浦友和主演の[ 転々 ]。本作のような小ネタ満載ではなく、しっかりと作りこまれた作品らしいので、次回も楽しみ。
■[ 図鑑に載っていない虫 ]の公式サイト
ライターの「俺」は、月刊『黒い本』の美人編集長(水野美紀)から「“死にモドキ”を使って、死後の世界をルポする」よう強引に依頼される。それは1回死んで戻って来いという無茶な指令だった。「俺」(伊勢谷友介)は急いで、オルゴール職人のエンドー(松尾スズキ)とともに“死にモドキ”を探す旅に出た。ルポが締め切り(8月31日)に間に合わなければ美人編集長に半殺しにされる。
はたして二人は“死にモドキ”は見つけることができるのか?
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三木監督の作品は脱力系というより、脱線コメディですね。
伊勢谷演じる僕が、“死にモドキ”を探しいろんな所を訪れるが、彼を取り巻くエンドーや旅の途中で出会った謎の女サヨコ(菊地凛子)、ヤクザの目玉のおっちゃん(岩松了)、舎弟のチョロリ(ふせえり)が、話をあらぬ方向へと導いていく。
特に松尾スズキが演じたエンドーがキョーレツです。
奇妙なキャラクター陣を表しているのが、無数の小ネタ。
サロンパス煙草、カップヌードルの肉を集めたステーキに、シオカラ・ケイジ。そして等身大のゼリー藤尾などなど。でもこれが、小ネタとは馬鹿にできぬほど、秀逸なネタなのです。人が思いもつかぬようなものばかり。
「一度、三木監督の頭をのぞいてみたい」。そんな衝動にもかられてしまう。
本筋とは全く関係のないような小ネタやセリフが積み重って、できあがった本作は、脱線つぐ脱線で、どこに向かって走っているのか、先の読めない物語になっているため、こんな瑣末な話で終わるのかという不安や戸惑いを上映中感じていた。
しかし三木監督は期待を裏切らない。ラストに本筋にしっかりと着地するのだ。そのうえ、よくみると“SM”、“孤島にある乞食の巣”=三途の川など、要所要所で生(性)と死を連想させるシーンも盛り込んでいる。でたらめなようで、緻密に計算された構成は、絶妙なバランスとしか言いようもない、これぞ三木ワールドなのです。
俺とエンドー二人で赤いカブリオレに乗っての旅は、テリー・ギリアム監督が手がけたドラッグまみれのジャーナリストの破天荒な取材ぶりを描いた[ ラスベガスをやっつけろ ](98)であり、煙の中、乞食の巣に向かうシーンは[ 地獄の黙示録 ](79)。“死にモドキ”という死を巡る旅なだけに、タイトルバックなどは日本の70年代のテイストで作り、シーンはアメリカンニューシネマ風に、頽廃的で厭世的なムードを表現。男二人の物語から始まるロードムービーというのは[ イージー・ライダー ] (69)にもかぶっている。
映画ならでの要素や、彼特有の脱線小ネタなど満載の映画です。三木監督の次回作は、オダギリジョーと三浦友和主演の[ 転々 ]。本作のような小ネタ満載ではなく、しっかりと作りこまれた作品らしいので、次回も楽しみ。
■[ 図鑑に載っていない虫 ]の公式サイト