[ 明日、君がいない ]絶望の淵から生まれたデビュー作 | アロハ坊主の日がな一日

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[ 明日、君がいない ]絶望の淵から生まれたデビュー作
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    [ 明日、君がいない ]を渋谷シネ・アミューズで鑑賞。

    「カンヌが19歳の若者に驚愕した」の触れ込みで話題になった本作。
    友人を自殺で失った半年後、自らも自殺しかけたというショッキングな実体験をもとにこの映画作りに取り組んだムラーリ・K・タルリ監督。

    映画づくり初挑戦とは思えぬ見事なできばえ。ストーリーもさることながら、インサートされている、逆光で輝く木の葉のショット、学校で行き交う主要な生徒たちを複数の視点から捉えたカメラワークなど。どうみても、キャリアのある監督が描いたようにしかみえない映像なのだ。かなりの低予算で作ったというのも驚きである。
    その日もいつもと同じ1日のはずだった。父の期待を一身に担う兄マーカス(フランク・スウィート)と、兄に脅える妹メロディ(テレサ・パルマー)、マッチョを気取るスポーツマンのルーク(サム・ハリス)、孤立するゲイのショーン、ルーク(サム・ハリス)との結婚だけを切実に願うサラ(マルニ・スパイレイン)、いじめられても卒業まで3ヶ月の我慢だと自分に言い聞かせるスティーヴン(チャールズ・ベアード)。今にも潰れてしまいそうな秘密を抱え、誰もが窒息寸前だ。やがて、午後2時37分、校舎の片隅でひとつの若い命が消えようとしていた…。(ホームページより)

    トイレから廊下に、流れ出る赤い血。それを発見した教師は、無我夢中で鍵のかかったトイレのドアをノックして「開けるんや!」(気持ちは関西弁で)と叫んでいる。“はたして、誰がいったい犠牲になったのか?”。こんなサスペンスタッチで始まるオープニングゆえに、冒頭から僕たちの心を釘付けにする。しかし犠牲者が探るのが、もちろんこの映画の本質ではない。

    ゲイのショーンや尿道が2つある知らないうちに漏らしてしまうスティーヴンは、いじめられっ子。同級生からは、話しかけてもらえないし、廊下ですれちがえば「くさいだの」「気持ちわるいだの」と罵られ、いつも孤独だ。

    彼らを見下したり、陰口をたたくのは、マッチョなルークやその仲間たち、そしてルークとの結婚を切に願っているサラたち。そして彼らもまた、人には言えない闇を抱えている。
    登場人物は、ほとんどが生徒たち、若者で構成されていて、大人は役割程度の教師。ほとんど限られた世界での話。それゆえ窒息しそうなほどの閉塞感は、ハンパないほどに感じてしまう。
    彼ら彼女らの秘密は、必ずトイレで明らかになる。このトイレという場所は、「秘密=隠し事」という隠喩であり、若者たちの「閉塞感」をも象徴しているのだろう。それとは裏腹に、物語にたびたびインサートされる若々しい木の葉や木漏れ日は、逆に希望や若さの象徴のように見える。監督としてのメッセージは、実はこのインサートにこそ込められているのかもしれない。

    最後に、トイレで命を絶った意外な人物が明らかになるが、この種明かしこそ若者の心の闇の深さを物語ることになる。
    映画をよく観る友人が、[ 明日、君がいない ]と、本作と同様のテーマで作られた日本映画[ 14歳 ]を比べて、“[ 14歳 ]はリアルさ、本作は作り物にこそ面白さがある”と評したが、これを聞いて思わず納得してしまった。そうなんだよな。本作は詩的な美しさ(=作り物)、それが若者のガラスのような心と妙に合致して惹かれてしまうのだ。

    忘れていた気持ちを、少し思い出した。しかし、それはあまりにも身勝手で、残酷で、しかし傷つきやすいという相反したものを含んでいる。いろんなことを経験した大人には、近づきたくない思いでかもしれない。だからこそ、こんな機会にでも、触れておくことは大切な気がする。いや、ちょっと真面目に書いちまった。[ 14歳 ]も同時に観て、そんな気分になってしまったかもしれない。それだけ年を重ねてしまったんだろうな。これっていいことなのか?

    ■映画[ 明日、君がいない ]の公式サイト
    | 映画レビュー | 18:10 | comments(0) | trackbacks(9) |
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    No.150 明日、君がいない
    見終わった後、これ、本当に監督が19歳なの? と疑ってしまうほど、緻密な構成に驚いた。 編集がお見事でした。
    | 気ままな映画生活 | 2008/11/12 10:58 PM |
    明日、君がいない:映画
    今回紹介する映画は、「自殺」という社会問題を取り上げた作品の『明日、君がいない』です。 明日、君がいない:ストーリー その日もいつもと同じ1日のはずだった。 父の期待を一身に担う兄マーカスと、兄に脅える妹メロディ、マッチョを気取るスポーツマンのルー
    | 映画、札幌グルメ情報はジフルブログ | 2008/03/25 1:32 AM |
    【DVD】明日、君がいない
    ■動機 各レビューでの高評価 ■感想 すげーわ、これ・・・ ■満足度 ★★★★★★★ びっくり ■あらすじ ある日の午後2:37、オーストラリアのとある高校生で一人の生徒が自殺した。時を遡ること6時間、弁護士を目指すマーカス、両親の自分に対する扱いに戸惑
    | 新!やさぐれ日記 | 2008/03/02 12:51 AM |
    明日、君がいない
     『それぞれに深い悩みを抱える10代たち 自ら命を絶つのはだれなのか?』  コチラの「明日、君がいない」は、4/21公開になった2006年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、絶賛されたムラーリ・K・タルリ監督の衝撃の初監督作品なのですが、観て来ち
    | ☆彡映画鑑賞日記☆彡 | 2007/10/03 11:48 PM |
    明日、君がいない
    オーストラリアのハイスクールが舞台の映画。 製作した時期が19歳だったというムラーリ・K・タルリ監督のデビュー作品。 色んな問題を心の内に、或いは一部分としては表に出てもいる、事情がある高校生達。人によって共感できるかもしれないしできないかもしれない
    | しぇんて的風来坊ブログ | 2007/06/17 9:57 PM |
    明日、君がいない
    時々、心に突き刺さってくる映画があります。これは、そんな映画です。 今、カンヌで、松っちゃんとかたけしとか、キムタク、慎吾ちゃんが行って、マスコミを賑わしていますが、さてさて成果は如何だったでしょうか
    | 描きたいアレコレ・やや甘口 | 2007/06/17 8:21 PM |
    誰にもいえないことはある
    121「明日、君がいない」(オーストラリア)  さわやかな風が吹きぬけ、生徒達の声でにぎやかな教室、廊下、グラウンド。あるハイスクールの見慣れた光景に、今日もいつもと変わらぬ日を過ごすかに見えたメロディ、マーカス、サラ、ルーク、スティーブン、ショーン
    | CINECHANの映画感想 | 2007/06/17 7:31 PM |
    明日、君がいない
    明日、君がいない  4/17(火)@TFMホール(試写会) 原題:2:37 監督、脚本:ムラーリ・K・タルリ 出演:テレサ・パルマー、フランク・スウィート、サム・ハリス、チャールズ・ベアード 他 配給:シネカノン 木の葉が揺れ、透き通るよな空気
    | シュフのきまぐれシネマ | 2007/06/17 1:31 PM |
    試写会にて「明日、君がいない」見てきました。
     いつもブログでお世話になっているKさんに誘われて試写会に行ってきました。明日、君がいないです。
    | よしなしごと | 2007/06/17 1:31 PM |