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[ JAPONICA VIRUS ジャポニカ・ウイルス ]ネタがたくさんつまった長編第一作目
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    [ JAPONICA VIRUS ジャポニカウイルス ]@池袋で鑑賞

    本作の監督入江悠が手がけた短編映画[ OBSESSION ]を含
    む4作品を、昨年観て非常に面白かったので、観ることに。

    中国で発生したとされる謎の感染症「カニエウイルス」が
    上陸し、混乱が広まる日本。治安維持のため、政府が「国
    民保安法」という統制法案を制定しようとする。そんな中、
    都内に住む陽一郎の弟・浩次がウイルスに感染して死亡し
    てしまうという出来事がおこる。陽一郎は関係の冷めきっ
    た同棲中の彼女・倫子と一緒に、地元・北陸の実家まで
    浩次の遺骨を届ける旅にでる。
    じゃぽにかういるす
    入江悠監督は、[ パビリオン山椒魚 ]の冨永監督と
    日大芸術学部映画学科の後輩と先輩という間柄。入江
    監督は[ パビリオン山椒魚 ]では助監督として参加
    し、冨永監督は本作で役者として出演している。また
    [ パビリオン山椒魚 ]で亀田役を演じた杉山彦々が
    本作で木下毛利役で出演している。独特の個性を持っ
    た、これからが楽しみな役者である。

    入江監督にとって本作が長編映画第一作目ということ
    もあり、パニック映画やロードムービーに、家族ドラ
    マ、政治映画など、様々なテイストを本作に盛り込ん
    でいる。それゆえ見方よっては少し荒唐無稽な作品に
    もみえる。しかし、これらも監督の過去作品を観れば
    うなずけてしまう。

    例えば、
    [ SEVEN DRIVES ]での車中での男女間のやりとりは、
    本作の主人公陽一郎(斉藤陽一郎)と倫子(鳥栖なおこ)
    が車で陽一郎の実家に向かうロードムービーに表れ、
    [ OBSESSION ]の女子高校生による「超共産主義研究
    会」と「宗教愛好会」の日々の争いは、陽一郎の実家
    で起こる反体制派と体制派の闘争にかいまみれる。本
    作の終盤に展開する雪上で倫子を陽一郎が追っかける
    シーンはまさに[ 行路I ]の積雪上を彷徨う男女とリ
    ンクしている。監督は、この長編映画を今までの集大
    成と位置づけ、今までの作品で表現した要素を本作に
    も詰め込んだのだ。

    一体どこに向かってストーリーは展開していくのか。
    少し戸惑いは感じるものの、予算の少ない中、日本を
    襲うウイルスという壮大な話をBSE、右傾化した国民
    そして9.11同時多発テロなどの様々な現代の世紀末的
    な事象をモチーフに、壊れていく日本人をしっかり描
    いている。登場人物たちの表情が見えないくらいの光
    量を落とした映像も、暗雲たちこめた将来を表してい
    るようだった。

    しかし、登場人物である陽一郎と倫子は、そんな世情を
    TVやはたまた弟の死により自分達の身にも迫っているこ
    とをわかっているにもかかわらず、これっぽちも恐れず
    まるで他人事のようである。2人の気がかりは、見ている
    だけでヘドが出るお互いの存在だけなのだろう。主人公
    2人に見える、世の中と自分達の暮らしとのギャップが、
    意外にも僕自身にも当てはまるようでちと怖かった。

    ラストの、雪上に佇む2人を俯瞰で狙ったショットは、
    すごく美しかった。今まで文句しか言わなかった陽一
    郎は倫子へいたわりの言葉をかける。そこでのまばゆ
    いぐらいの銀世界としんしんと降る雪が、まるでギス
    ギスした2人のお互いへの猜疑心(特に陽一郎)を洗い
    流しているようだった。そして、それまでの光量を落
    とした薄暗いショットの意味が、このラストのシーン
    のためにあっただと、ようやくわかる。監督にとって
    は、これが渾身の一作というのが手にとるように見え
    てくる。

    日大芸術学部映画学科の先輩と後輩で、同年に長編映画
    を発表した冨永監督と入江監督。熊切和嘉監督と山下敦
    弘監督のように今後、何かと比較されることだろう。
    ちなみに、僕はやはり[ パビリオン山椒魚 ]より
    [ JAPONICA VIRUS ジャポニカ・ウイルス ]でしたね。
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