2017.10.21 Saturday
映画【 散歩する侵略者 】嫌になっちゃうな
ずいぶん前に書いていたのに、少し寝かせすぎた。
処女作【 神田川淫乱戦争 】から、(一部ラブストーリーもあるが)常に奇怪な作品を創り続けている黒沢清監督。最新作である【 散歩する侵略者 】も黒沢ファンの心を揺さぶる禍々しさは健在である。しかしラストは哀切さもあり、黒沢作品としては新鮮さが得られるはずだ。
<ストーリー>
鳴海(長澤まさみ)の夫・真治(松田龍平)が、数日間行方をくらまし、別人のようになって帰ってくる。これまでの態度が一変した夫に疑念を抱く鳴海は、突然真治から「地球を侵略しに来た」と告白され戸惑う。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こったのを機に、さまざまな現象が発生し、不穏な空気が漂い始める。(シネマトゥデイより)
処女作【 神田川淫乱戦争 】から、(一部ラブストーリーもあるが)常に奇怪な作品を創り続けている黒沢清監督。最新作である【 散歩する侵略者 】も黒沢ファンの心を揺さぶる禍々しさは健在である。しかしラストは哀切さもあり、黒沢作品としては新鮮さが得られるはずだ。
<ストーリー>
鳴海(長澤まさみ)の夫・真治(松田龍平)が、数日間行方をくらまし、別人のようになって帰ってくる。これまでの態度が一変した夫に疑念を抱く鳴海は、突然真治から「地球を侵略しに来た」と告白され戸惑う。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こったのを機に、さまざまな現象が発生し、不穏な空気が漂い始める。(シネマトゥデイより)
JUGEMテーマ:映画
黒沢清監督の作品は、本当に不可思議だ。【 トウキョウソナタ 】でもあったが、父親役の香川照之が、泥だらけになって帰宅して、着替えもせずに家族で食事をするシーンがある。息子や嫁は、その奇妙な親父の姿に異議を唱えず、みんな黙々と食事をほおばる。違和感丸出しのシーンであるはずなのに、観客も黒沢監督の創り出す世界観についつい引き込まれ、それも良しとしてしまう。
本作で言えば、長澤まさみと松田龍平が紡ぎ出す夫婦のシーンだ。数日間行方不明になっていた夫が見つかったはずなのに、嫁は心配するのではなく、常に憤りを持って接する。その理由は、表面的には行方不明になる前に夫が浮気をしていたというのが発端としてあるようだが・・・・ストーリーが進んでいくと、実は世の中の不条理さを鳴海が感じていて、それが要因の一つであるというメッセージになっていて、違和感から一気に共感さえ湧き出るほどのリアリティをもてるシーンへと回収していく。
侵略者たちは、地球人のことを知るために「概念」を人間から奪う。そして、人間は奪われることで、その「概念」が失われてしまう。この設定がとてもユニークで、興味深い。人によってその「概念」への認識が異なり、「◎◎はこうあるべき」という、その人の価値観も含まれているので、侵略者に奪われることで、ある人はダメ人間になり、ある人にとっては生きる意味を見出すきっかけになる。人間がいかに概念(それを創り出す言葉)によってしばられていることか、痛感する。
ジャーナリスト桜井演じる長谷川博己と、若き二人の侵略者のパートと、長澤まさみと松田龍平が演じる夫婦のパート。2つのエピソードのバランスがちょうどいい。個人的に好きなのは、夫婦2人で逃避行する車中のシーン。世紀末とは思えない牧歌的な雰囲気が、可笑しいけれど、とても微笑ましく、心地よい。
ラストは、哀切さで心が震えそうになる。久しぶり、観てよかった思える作品だった。
本作で言えば、長澤まさみと松田龍平が紡ぎ出す夫婦のシーンだ。数日間行方不明になっていた夫が見つかったはずなのに、嫁は心配するのではなく、常に憤りを持って接する。その理由は、表面的には行方不明になる前に夫が浮気をしていたというのが発端としてあるようだが・・・・ストーリーが進んでいくと、実は世の中の不条理さを鳴海が感じていて、それが要因の一つであるというメッセージになっていて、違和感から一気に共感さえ湧き出るほどのリアリティをもてるシーンへと回収していく。
侵略者たちは、地球人のことを知るために「概念」を人間から奪う。そして、人間は奪われることで、その「概念」が失われてしまう。この設定がとてもユニークで、興味深い。人によってその「概念」への認識が異なり、「◎◎はこうあるべき」という、その人の価値観も含まれているので、侵略者に奪われることで、ある人はダメ人間になり、ある人にとっては生きる意味を見出すきっかけになる。人間がいかに概念(それを創り出す言葉)によってしばられていることか、痛感する。
ジャーナリスト桜井演じる長谷川博己と、若き二人の侵略者のパートと、長澤まさみと松田龍平が演じる夫婦のパート。2つのエピソードのバランスがちょうどいい。個人的に好きなのは、夫婦2人で逃避行する車中のシーン。世紀末とは思えない牧歌的な雰囲気が、可笑しいけれど、とても微笑ましく、心地よい。
ラストは、哀切さで心が震えそうになる。久しぶり、観てよかった思える作品だった。